イギリス留学 ワーキングホリデー体験談(アーカイブ)

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ヘッジホッグ、汗と涙のワーホリ物語
「コーラはどこへ消えた」
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イギリスに着いて1日が過ぎた。目覚めるともう昼12時になっていた。昨日は疲れ
から14時間も寝てしまった。寝過ぎだろうか、やや体がだるい。のども渇ききって
いる。寝ぼけ顔で洗面台に行き、顔を洗ってキッチンへ向かった。昨日買っておいた
2リットルのコカコーラを飲むためだ。

「1 buy 1 get free(1本買えばもう1本はただ)」よくこっちのお店
が使う広告だが、まんまと乗せられて買ってしまった。1本は冷蔵庫へ、もう1本は
お米やジャガイモなどみんなが貯蔵庫として利用しているスペースに置いた。

それにしても冷えたコーラはおいしい。渇いたのどはシュワシュワという炭酸ののど
ごしとともに、すっきりさわやかにしてくれる。生ぬるいコーラではこの感覚は味わ
えない。しかし、パキスタンの3人組は昨日も買ってきたばかりの生ぬるいものをパ
キスタンの主食ジャパティのお共にしていた。

キッチンでコーラを飲んでいると、「おはよう、ヒロ!今時間あるかい?」いつもの
インドの方の人達が着る袴のような衣装でパスカルが尋ねてきた。「いいけど、なに
があるの?」不思議そうに僕は彼に質問をした。「いや、家族会議を開こうと思うん
だ。」「家族会議?!」そんなに重要なことがこの家にもあるのだろうか、半ば不信感
を抱きながらダイニングへ向かった。もう既に、他の皆は集まっていた。

「ようこそ、皆さん集まってくれました。では、早速、家族会議を開きたいと思いま
す。」流暢なしゃべり方でパスカルは会議をスタートさせた。この様子から、この家
族会議というものが今日初めてでないのだと悟った。「では、初めに掃除当番を決め
たいと思います。ダイニングに2人、キッチン1人、バスルーム1人に廊下と階段に
1人で行きたいと思います。なにも異議がなければ、このままで行きたいと思います
が、皆さんどうですか?」

何か、小学校時代の学級会の時間を彷彿させるような流れだ。学級委員長のパスカル
は僕ら個人個人にどこを掃除したいか希望を聞き、結局僕とルームメイトのヨンジン
がダイニング担当になった。他にもいろいろと決まったので、下にまとめてみた。

?掃除は週1を原則とし、毎月ローテーションで担当場所を変えていく。
?電気代はみんなで割り勘とし、月々5ポンド払うこと。
?家庭用品(トイレットペーパー等)も毎月一人5ポンド払うこと。
?何か問題があれば、いつでも臨時家族会議は開かれる。ちなみに毎月始めに定期的
に家族会議は開かれる。
??の買い出しはフィリップとパスカルが行く。

30分くらいの会議の後、帰国後最初のUK-Jへいった。トシさんもアキコさんも元気
そうでいろいろ日本でのお話をしたが、こっちに来る前に学校に連絡が取れなかった
件で、こちらの留守電に学校に確認の電話を入れてもらえないでしょうか、という
メッセージを残しておいたので、僕がうまくこちらに着いて家が見付かったかどうか
心配し
ていたようだった。僕がイギリスに着く前に学校のアコマデーション担当のあのウェ
ンディーにUK-Jから連絡をとってもらっていたのだが、彼女の返事ときたら相変わら
ずのものだった。

「大丈夫よ。ヒロは十分ここサウスホールのことよく知ってるから心配要らないわ
よ。」
まったく、もし僕の身に何かあったらウェンディーはどうするつもりなんだろう?
時々、ウェンディーの楽天的な物事の考え方に感心してしまう時がある。

さて、家について昨日貯蔵庫に置いておいたコーラを冷蔵庫にしまっておこうと見て
みると、なんと違うメーカーの物にかわっているではないか?!「コー、コー、コー、
コーラが変わってる!!!!」
思わず日本語で叫んでしまった。すると慌ててフィリップが僕の声に駆けつけてやっ
てきた。
「いったい、どうしたんだ、ヒロ。」
「昨日買っておいたコカコーラが消えているんだ。」
フィリップはダイニングにいたパスカルに事情を話すと、彼は慰めるように話し掛け
た。

「ヒロ、ぼくらは知らないけれども、さっきまでヨンジンが韓国人友達を連れてきて
いたからひょっとしたら彼がだしたかもしれないなぁ。一度彼に聴いてみるといい。
でも、そんなにコーラを飲みたいなら僕らのをあげよう。」
パキスタン人達が別で使用している冷蔵庫の中から、半分飲みかけの一本のコカコー
ラを取り出した。

(あれっ?!)僕はピンときたので、彼らに尋ねてみた。
「そのコカコーラはどこから持ってきたの?」
「あぁ、これかい。これは貯蔵庫にあったものを昼のご飯の時に飲んだんだ。」
「僕の探しているのはコカコーラなんだけど......」力無しに迫ってみると、
「ヒロ、いつもぼくらはどのメーカーのコーラを買ってるか知らないんだ。もしかし
たら間違って飲んだかもしれないなぁ。ところで、このコカコーラ飲むかい?」
完全に物事をあやふやにされてしまった。

こういった事件は今日だけですまなかった。時には、油を使われるは、僕が買った鍋
を勝手に卵を茹でるためにアクターが使ってるは、お米も少しずつ減ってるは、さら
にカレーを作るために炒めていた玉ねぎを、僕が手を洗っていて目を離している間に
フィリップは自分のスクランブルエッグに入れるために、半分勝手に持っていってし
まっていたり多々そのような事件が起こった。

そんなある日、ヨンジンが韓国から持ってきたコンピュータを、ヨンジンがいない間
に部屋に入ってフィリップが使っていたので、ヨンジンはそれをやめて欲しいと抗議
した。すると、明くる日からダイニングのテレビが消えてしまっていた事件があっ
た。そして、初の臨時会議へ突入した。

まずフィリップらはテレビを隠した事について説明をした。
「ヨンジンが自分のもの(コンピュータのこと)を使って欲しくないと言ったから、
それを言われた方の気持ちがどんなものか、テレビを隠して分かって欲しかった。だ
から、隠したんだ。」

自信を持って彼は話したが、よくよく考えれば、そのテレビは彼らが買ったものでは
ない。よくもまぁ、そう言いきれるなぁと僕は聴いてて呆れてしまった。そしてヨン
ジンは、こう反論した。
「コンピュータを使うことは、悪いとはいわない。ただ、僕とヒロのいない間に部屋
に勝手に入るのだけはやめてほしい。」

この意見は僕も賛成だった。もし、万が一、僕らが居ない時に物が無くなったら彼ら
を最初に疑わざるおえなくなってしまう。できれば、疑いたくない。だから、早めに
きちんとしておくのは正しいことである。しかし、パスカルらはそれを聴いて、

「ヨンジン、僕らは悲しいよ。君が、そんなふうに考えているなんて。それじゃぁ、
僕らがまるで泥棒みたいじゃないか。僕らはひとつ屋根の下に共に暮らす家族だ
ろ。」
続けるようにフィリップは、
「ヨンジン、このまま一つの家族として僕らと過したくないなら、僕らもそう接する
つもりだけどね。」

彼らは、やたらに家族、家族という言葉を頻繁に使うが、考え様によっては単なるな
んでも使わせろと強要してるようなものじゃないか。まるで人気アニメのキャラク
ター、ジャイアンのような「お前のものはおれのもの、おれのものはおれのもの」
的、発言ではなかろうか。

僕は自分の不満も兼ねてヨンジンをバックアップするために彼らに言ってやろうとし
た瞬間、
「僕が悪かったよ」とヨンジンが口を開いた。さらに、
「これは僕のエゴが起こした問題だ。自分の物を人に使ってもらいたくないという狭
い気持ちに問題があるんだ。ごめんなさい、フィリップ、パスカル。」

(おい、おい)そんな答えが返ってくると思わなくて、僕はビックリでガッカリして
しまった。確かに、ヨンジンは韓国で牧師のアシスタントとして働いていたので、彼
がそう答えたのもわからなくはない。しかし.....。
不完全燃焼な会議は、最終的に無断で僕らの部屋に入らないことだけは認めてもらえ
た。

これで良かったのだろうか。中東からインドにかけた人達によく、人のものと自分の
ものの区別がないことがある。日本人が妙にきちんとし過ぎるのか、それとも彼らが
物的感覚がかなりずれているのか定かではないが、今回の事件を通してもっとお互い
の文化の違いを話し合い、互いに譲歩しあう必要があると感じた。さらに、言いたい
事をはっきり主張したヨンジンと、言いたい事をいいきれない自分の差が、とても恥
かしかった。

部屋に戻って、ヨンジンにもう一度尋ねてみた。「ヨンジン、あれでよかったのかい
?」
彼は真ん丸顔に笑顔を浮かべてこうこたえた。
「神に尋ねたんだよ、あの時。そして、あれが正しい答えだったんだよ。」
続けるように彼は、"Good Night"といい深い眠りに入った。僕は、2、3度深いため
息をつき横になった。とても長い夜、不思議となかなか眠りにつくことが出来なかっ
た。

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