イギリス留学 ワーキングホリデー体験談(アーカイブ)

バックナンバーへもどる

ヘッジホッグ、汗と涙のワーホリ物語
「祈りよ届け!」
====================================================================

校長のボイドは深いため息の後に言葉を発し始めた。

「みんなといっしょに勉強してきたモニカが今、危篤状態にある。昨日の夜、倒れて
そのまま病院に運ばれた。朝から病院に行ってモニカの様態を見に行ったが、今、集
中治療室の中で昏睡状態であった。病因は今、調べているところだが。一つみんなに
言っておかなければいけないことがある。それは、決して病院に行ってはいけないこ
とだ。以前、ここでモニカのように英語を勉強していたモニカのお姉さんからの希望
だ。みんなが見舞いに行きたい気持ちはわかるが、今できることは神にお祈りするこ
とだ。」
と言い、みんなで隣りの教会に祈りに行こう、ということになった。

さすが、クリスチャンが経営している学校だとその信仰心の熱さには感心するもの
の、だからってモニカがそれで本当に復活できるのか?と無宗派の人間ならではの反
発も抱いた。とはいえ、あの子が信じる者が神なら、それにすがるのが今はベストだ
と思いそのお祈りに参加することにした。

先生の中でも信仰心の強いメリオンが先頭に立って、ひざまずき前の椅子の背に両手
を組んで乗せるようにしてぼそぼそと神にお祈りを始めた。周りのみんなも続くよう
にして、ある者はメリオンと同じ様な姿勢を取り、またある者は椅子に腰掛け上半身
を屈むようにして両手を組み合わせお祈りをしている。僕はその様子を見ながら、何
かとても強いパワーのような何とも表現できないエネルギーを感じた。なんだろう?
みんなの願いが一つのせいだろうか。とても魂のような霊妙さを身体全身で受け取れ
た。継続的な震えが僕の肩口から背中にかけて襲ってきた。その強襲した震えを止め
ることだけでいっぱいで、僕はモニカを祈る所ではなかった。突然、一人のブラジル
人の女生徒が立ち上がり、両手を空高く上げ歌い始めた。もちろんクリスチャンソン
グである。きれいなメロディーにのせて両手を軽くウェーブさせる様に身体全体で表
現し始めた。歌詞はポルトガル語だったため何を意味しているのかわからなかった
が、所々にモニカという言葉が出てきていたのだけは聞き取れた。

15分ぐらいであろうか。この休憩時間のお祈りは、再びボイドが正面に設けられた
一段高くなっている台の上に立ち、話し始めたところで終了した。みんなの顔を見る
と一部の生徒が涙を流していた。先生のメリオンもその一人であった。

後で聞いた話だったが、メリオンはモニカとこのとき部屋をシェアしていたらしく、
モニカのその病気に気付かなかったことへの情けなさから激しく自分への罪の意識を
感じていたという。

この日そのメリオンが担任であった。彼女は、授業終了後モニカのお見舞いに行くと
いう事で、生徒たちからのメッセージを手紙に書いて一緒に持っていくということを
考案した。そしてテーブルの上に手紙だけ置かれ参加者を募った。僕は迷わず、その
手紙にメッセージを添える事にして授業終了後それを書くことにした。しかし授業終
了後見てみると、その手紙には、未だ数人の生徒からのメッセージしか載っていな
かった。なにか冷淡なこの有様に物寂しさをおぼえた。(あのお祈りなんだったんだ
ろうか、みんなは必死にモニカの為に祈ったからそれでもう十分なのか)他人は他
人、自分は自分だ。僕はその手紙にこう記した。

"もう一度、元気な姿が見えるのを楽しみに待っているよ"、と。

イギリス留学 ロンドン語学学校

Twin Towers English College

53-55Ballards Lane, Finchley, London N3 1XP
Tel 020-8343-3567 メール問合せフォーム
英語版のWEBSITE


2013年以降YMSのページをアップデートすることを断念しましたが、もちろん今でもYMSで来られたみなさんのための最初の英語研修の場所、そして、友人をつくるための場所として Twin Towersはしっかりとサポートしています。イギリス留学の際には是非、当校をご利用ください。