イギリス留学 ワーキングホリデー体験談(アーカイブ)
ヘッジホッグ、汗と涙のワーホリ物語
「11/09/2001-2002」
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あの衝撃的な出来事から1年が過ぎた、2003年の9月の11日。
僕は、N社のローリーに揺られながらロンドンの街中に向かっていた。車内にはBB
Cラジオ3から80年代の音楽が流れている。このチャンネルは、新旧気にせず曲を
チョイスしてくれるラジオ曲である。そして時々、曲と曲の間にニュースを流してく
れる。キャピタルFM、ヴァージンFM、ロンドンハートFM。これらは、よく耳に
しているラジオ局だが、このBBCも僕にとっては捨てがたい1つである。
このロンドンの景色を車窓から見ながらラジオから流れる音楽を聴くのが、僕の日課
になっていたが、そのリラックスの時間を阻止しようとする者がいつもいる。それ
は、英人作業員である。この日も英人ドライバーが、相変わらずブーブー会社の文句
を言っている。せっかくの自分の時間も結局は英人の愚痴の時間になってしまうの
だ。
取り止めのない仕事の不満話が続くのだが。ところが、今日に限っては、大きく違っ
ていた。
曲と曲の切れ間に、いつものようにニュースが流れた。「"September 11(セプテン
バー イレブン)"から1年が過ぎた今日...。」その瞬間、英人作業員がふと言葉
を詰まらせた。ニューヨークで行ったセレモニーについてのニュースであり、大統領
の悼みを含めたアナウンスが流れた。
お互い、このニュースに聞きいっている。
「......」
去年の今日は、イギリス南部ボーマースで引越しの手伝いをしていた。引越し屋をし
ていたわけではない。ボランティアとして同じ街の障害者施設で働いていたのだが、
ちょうどこの時期1人の障害を煩っている女性が、国から独りで生活する事を認めら
れ引越していたのである。この施設には、障害者数11人で生活していたのだが、そ
の中に1人だけ女性がいた。その彼女の手伝いをしていたのである。
彼女は、車椅子に乗っての生活であり、後ろ向きで自分で動かせられる片足を蹴って
移動をしていた。そして器用にも、その足を使って足元のキーボードを踏んで、コン
ピュータを使うことができた。その能力を生かして、他の障害者の人達ための活動、
またはチャリティーショップの経営の一員としてのドキュメント作りなどに一役買っ
ていた。
言葉を思うように話せない彼女は、とても何でも自分でやりたがり屋であった。もち
ろん体を自由に使えれないので、ボランティアもしくは施設で働くスタッフにいろい
ろと「こうして、ああして欲しい。」と言ってくるのだが、正直なところ僕自身、英
語もきちんと聞き取れない上に、聞き取りにくい英語を話されても理解する事はた易
い事ではなかった。
もし、僕が困った顔をしたならば、彼女はヒステリーを起こしはじめる。彼女は、と
ても感情屋さんでもある。それは、決して悪い意味ではないのだが、彼女自身、もし
うまく言葉を使えられたのであらば、ヒロが困る事はなかったであろう、と思い込ん
でしまい、それをヒステリックに表現してしまうのであった。
正直、すごく精神的に疲れる相手であったが、その彼女の持つ"自分が、自分が"と思
う気持ちは接している僕らに考えさせられるものがあった。お世話をするという立場
は、ハッキリ言って奉仕作業である。決して何かが自分に返ってくるといった"Give
& take(してあげて、してもらう)"的考え方は存在しないといっていい。さらに、何
でもしてあげれば喜ばれるといって、手をだし過ぎてもいけない。甘やかしてもいけ
なく、突き放し過ぎてもいけない。微妙な立場であった為か、ここを去る頃には辛抱
強くなれた気がする。
ただし、この仕事を通して、たった1つの"Take"を感じられる時がある。それは、障
害者達が口にするたった一言の"Thank you"である。
引越しが済み施設に戻ると、テレビの前をスタッフと車椅子に乗った彼らが囲んでい
た。建物が崩れ落ちていく映像であった。空前の出来事であった。僕らは、ただテレ
ビの前に佇む以外何も思いつかなかった。すると、僕の背中をキュッキュッと押す感
触が伝わってきた。我を取り戻したかのように、後ろを振り向くと彼女がいた。何か
を言っている。小さな声で。耳を研ぎ澄まして、彼女の口の動きを注意深く覗き見
た。
「Thank you,Thank you」
彼女は、僕をじっと見つめてこの言葉を繰り返した。たった1つの"Take"を彼女から
もらったのだ。
「......」
「ヒロ、去年のこの日、お前は日本にいたのか?」
英人作業員が、口を開き始めた。
「いや、イギリスにいたよ、...。」
この時ばかりは、言葉が感情に勝らなかった。
トラックは、何時の間にか渋滞にはまっていた。「またかよ!」英人ドライバーが、
ため息と共にぼやいた。そして、彼は、いつものようにいつもの愚痴をリピートし出
した。「まただ。」僕は、再び相づち役を買ってでるのであった。
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