イギリス留学 ワーキングホリデー体験談(アーカイブ)
汗と涙のワーホリ物語
「恐怖体験 後編」
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チカちゃんの声は前にもまして震えていた。まるで今もなお何かが彼女の近くに迫っ
ているかのようであった。
「じ、じ、実は...。」
彼女は、只ならぬ様子を浮かべ、一つ一つ言葉を選ぶかのようにとてもゆっくりとし
た口調で話しを続けた。
「その日のお昼に、私は学校に行く準備をしていたんです。みんな、家の住人はすで
にそれぞれの学校に行っていて、その日に限って私一人だったんです。そした
ら...。」
一度、彼女の言葉が止まった。僕は、彼女の呼吸に合わせるかのように息をのみ、彼
女が話しはじめるのを待った。再び、彼女は韓国のお茶を口に含み、喉を潤したあと
話しだした。
「そしたら、玄関で誰かの話し声が聞こえるんです。最初は、隣かな?と思っていた
んですが、なかなかその話し声が終わらないんで、窓からこっそり覗くと...。大
きな肌の黒い男性がうちの前に立って一人で話しているんです。
そして...その男が突然、うちの玄関口の扉をノックしてくるんです。ガンガン、
ガンガンと大きな音を立て、うちの鉄格子の外の扉がギシギシ揺れて今にも男が入ろ
うという勢いだったんです。私、何をしていいやらわからなくなっ
て...、私、恐くなって自分の部屋に飛び込んで布団に潜ったんですけど...。
その男は、さらに興奮しはじめて、今度は大声で怒鳴りはじめて...。」
彼女は、この話を話し終わるころには、目にうっすらと涙を浮かべていた。それは、
いかにその時の状況が恐かったかを言わずと僕に悟らした。結局のところ、彼女が気
が付くと男の姿が消え、その後、近くに住んでいる友達に電話してそれから1週間そ
の友達のおうちに泊まっていたのだという。
このチカちゃんに限らず、恐い体験をしている人はわりといるのではないかと思う。
この男の僕ですら、真夜中、一人で歩いていると車からクラクション鳴らして横つけ
して、「家までおくってやろうか?」と尋ねてくる連中がいる。
誘拐事件が多いこの国では、ちょとした甘い誘いは自分たち自ら気をつけないとまき
ぞいを食ってしまう。もちろん、今の日本も昔ほど安全とは言えないのかもしれない
が。
N社で働く同僚の英人作業員がある日、僕に言った言葉がある。
「この英人ですら、危ないんだぞ!」
彼は、二人の小さい子どもがいるのだが、彼らを家の近くの公園で遊ばせるのも親が
見ていないと危険だというのだ。その公園には大きな池があって、子供たちは興味本
位で近寄るのだが、その池の向こうにちょっとした森があり、その中から奇妙な男が
子供たちのもとへ近寄って来ることがあるのだという。
民族間が交わる場所はやはり争い事は堪えない。これは、国同士の話でもいえるよう
に、異なった宗教と習慣が時として危険な事態を招くものである。今回のチカちゃん
の場合、住んでいた場所がロンドンの下町の人々が集まる東部であり、正直、安全と
は言い難い地帯であった。薬、売春、銃。どれもよく聞く危険なフレーズであるが、
ここ一帯では日常茶飯事聞く言葉のひとつである。それだからとはいわないが、少な
くとも中東系やアフリカ系、ジャマイカ系などさまざま人種が移り住んできているこ
の一体に慣れない女性が住むというのは、僕はあまり賛成できな
い。
それから数週間して、チカちゃんは家を移り、今は楽しく新しい韓国人の住人と楽し
くロンドン生活を送っている。今となっては、チカちゃんも思い出?のひとつかもし
れないが、今後、こちらに留学を考えている人たち家探しには、十分気をつけてもら
いたいものである。
イギリス留学 ロンドン語学学校
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2013年以降YMSのページをアップデートすることを断念しましたが、もちろん今でもYMSで来られたみなさんのための最初の英語研修の場所、そして、友人をつくるための場所として